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工賃向上・作業づくりChatGPT

AIを使った新しい受注作業のつくり方【工賃UP・ChatGPT】

2026-07-27

ChatGPTに「新しい作業のアイデアを出して」と聞いてみたことがある事業所は、この1〜2年で増えてきたはずです。ただ、返ってくるのが「農福連携」「自主製品」のような一般論ばかりで、うちの利用者さんの人数・得意なこと・地域の産業に落ちてこない、というところで止まってしまう方も多いのではないでしょうか。地域企業への提案書や作業手順書を作る段階でも同じで、白紙から書くのは骨が折れる一方、AIに丸投げすると事実と違う実績や、権利関係があいまいな提案が混ざってしまうこともあります。

この記事では、「とにかく新しい作業を探しましょう」という話ではなく、ChatGPTを使って新しい受注作業のアイデアを広げ、提案書と作業手順書を形にする手順を、一般に使える形として整理しました。使うのはChatGPTという、特別な契約がなくても始められるものです。福祉専用のシステムを新しく入れる話は出てきません。今ある体制のまま、職員の手元で試せる範囲だけを書きます。

この記事はこんな方向けです

すでにAIを一度は試している前提で書いています。手順は改めて確認しつつ、「作業アイデアの広げ方」と「標準化」を中心に読み進めてもらえると、そのまま事業所の運用に落とし込める形になっています。

前提: 工賃の原資には法律上のルールがある

新しい作業を始めるかどうかの最終判断は、利用者一人ひとりの障害特性・体力・興味関心を日々見ている職員にしかできません。AIにできるのは、あくまで「こういう作業の種類がありますよ」という候補を広げ、比較検討のたたき台を早く出すところまでです。ここを最初に押さえておくと、「AIに作業選びまで任せて大丈夫か」という不安の大部分は整理できるはずです。

もう一つ、この記事の前提として押さえておきたいのが、工賃の原資には法律上の決まりがあることです。指定障害福祉サービス基準(平成18年厚生労働省令第171号)第201条第1項は、就労継続支援B型事業者に対し、利用者に支払う工賃を「生産活動に係る事業の収入から、生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額」に相当する金額と定めています。つまり、受注額(売上)がそのまま工賃になるわけではありません。原材料費・運搬費・機械の維持費などを差し引いた残りが工賃の原資なので、利幅の薄い受注をいくら増やしても工賃はほとんど上がらず、むしろ経費で目減りすることさえあります。新しい作業を検討する際は、「売上が見込めるか」だけでなく「経費を引いて手元に残る額があるか」まで確認することが欠かせません(出典: 指定障害福祉サービス基準 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171 )。

同じ第201条は、工賃の月平均額が3,000円を下回ってはならないことも定めています(第2項)。これは利用者一人ひとりの額ではなく、その事業所で支払われた工賃の平均額です。あわせて、年度ごとに工賃の目標水準を設定し、その水準と前年度の平均工賃額を利用者に通知したうえで都道府県に報告することも求められています(第4項)。年度の初めに目標を決めて動き出す前提になっているので、新しい作業づくりも「今年度の目標をどう達成するか」と紐づけて考えると、報告のときに筋が通ります。

さらに第202条が準用する第192条第6項により、工賃の支払いに充てる費用を、サービスの対価として事業所が受け取る給付費から出すことは、災害等の例外を除いて認められていません。工賃は、あくまで生産活動そのものの収益から支払う必要があります。つまり、給付費で工賃を補填して見かけの平均額を上げる、という手は制度上とれません。工賃を上げる方法は「生産活動の採算そのものを良くする」しかない、というのがこの記事の出発点です。

事業所にとって工賃向上は「利用者のため」だけでなく、経営上のインセンティブでもあります。ただしこれは報酬体系の選び方によります。就労継続支援B型の基本報酬には、前年度の平均工賃月額に応じた体系と、利用者の就労や生産活動等への参加等をもって一律に評価する体系の2つがあり(厚生労働省 令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容)、前者を選んでいる事業所では、工賃を上げることが事業所自身の収入にも直結します。

その平均工賃月額に応じた区分の基準額が、2026年6月から見直されて施行済みです(厚生労働省 就労継続支援B型の基本報酬区分の基準の見直しについて)。内容は、上位6区分の下限が一律3,000円引き上げられ(4.5万円→4.8万円、3.5万円→3.8万円、3万円→3.3万円、2.5万円→2.8万円、2万円→2.3万円、1.5万円→1.8万円)、引き上げで空いた幅に中間の区分が新設される、というものです。

**ここが工賃向上の話に直結します。**基準額が上がったということは、去年と同じ工賃額を維持していても、区分が1つ下がって基本報酬が減る事業所があるということです。今回の見直しは、令和6年度改定で平均工賃月額の算定方法が変わって平均額が約6千円上昇し、想定以上に高い報酬区分の事業所が増えたことへの対応です(厚生労働省 令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について)。つまり「うちは前回上がったから大丈夫」と思っている事業所ほど確認が要ります。現状維持は、実質的には後退になりえます。

ここで実務上おさえておきたいのは、全事業所が対象ではないことです。平均工賃月額1万5千円未満の区分は変更されないため、この層の事業所に影響はありません。また、令和5年4月以前から指定を受けていて、令和6年3月から4月にかけて区分が変わらなかった、または下がった事業所も対象外とされています(令和5年5月から令和6年3月に指定を受けた場合は比較する月が異なり、令和6年4月以降の指定は対象になります)。

手続きは対象かどうかで分かれます。対象になる事業所は区分変更の届出が必要で、この届出は令和8年6月中に行うことが基本とされていました(自治体によっては、事務負担の軽減のため令和8年4月に前倒しで提出を求めていた例もあります)。まだ対応していなければ、まず指定権者に相談してください。対象外の事業所は区分が自動で切り替わるため変更届出は不要ですが、対象外であることが分かる根拠書類(令和6年3月・令和6年4月の基本報酬区分が分かる書類など)の提出・確認は必要とされています。「対象外だから何もしなくていい」ではない点に注意してください。自事業所がどちらかは、上記資料の判定手順で確認できます。

ChatGPTで新しい作業の候補を広げる

まず、今の事業所の状況をできるだけ具体的にChatGPTに伝えます。利用者の人数、得意な作業のタイプ(細かい手作業が得意/単純作業を長時間続けるのが得意/対人対応が得意、など)、既存の設備、地域の産業(農業が盛んなのか、製造業の工場が多いのか、飲食店が多いのか)といった情報です。ここに実際の利用者の氏名や個人が特定される情報は入れず、あくまで「傾向」として伝えます。

プロンプトの例です。

就労継続支援B型事業所の運営者です。
以下の条件に合う、新しい受注作業・自主製品のアイデアを10個出してください。

- 利用者は現在12名。細かい手作業が得意な人が多く、長時間の単純作業も苦にならない人が多い
- 立地は地方都市の郊外。近隣に農業・食品加工業の事業者が多い
- 既存設備: 作業机・軽作業用の道具のみ(重機や特殊な機械はない)
- 現在は主に箱折り・シール貼りの受注作業を行っている

それぞれのアイデアについて、
1. どんな作業内容か
2. どんな企業・団体からの受注が考えられるか
3. 利用者にとってのメリット(工賃・やりがいの両面)
4. 想定される受注単価・必要な材料費・1個(1件)あたりの作業時間の目安
を簡潔に整理してください。
一般論だけでなく、上記の条件に合わせて具体的に考えてください。

工賃は「売上から経費を引いた額」なので、4番の単価・材料費・作業時間まで出してもらうと、採算が見込めそうな候補を早い段階で絞り込みやすくなります。

出てきた候補の中から、実際に現場で「これならできそうだ」というものを2〜3個に絞り込みます。その際、実現可能性に加えて次の点も確認してください。

これらはAIには判断できない領域なので、迷う場合は依頼主に直接確認するか、必要に応じて専門家に相談してください。また、ChatGPTが出す候補が一般論に寄っていると感じたときは、既存の受注実績・過去に断った依頼・近隣企業のリストを追加で伝えて出し直してもらう、候補ごとに必要な設備・想定単価・利用者の負担を表にして比較する、といった一手を加えると精度が上がります。

ChatGPTで新しい受注作業を見つける3ステップ

地域企業への提案書をChatGPTで下書きする

作業の方向性が決まったら、次は受注してくれそうな地域の企業・団体への提案です。多くの事業所が「何を強みとして伝えればいいか分からない」でつまずくポイントですが、ここもChatGPTで下書きを作ることができます。

就労継続支援B型事業所として、
以下の作業を地域の企業様に提案する文書の下書きを作ってください。

- 提案したい作業内容: (上で絞り込んだ作業内容)
- 対応可能な人数・頻度: (実際の体制)
- これまでの受注実績: (実績があれば簡潔に。なければ「初めての受注に丁寧に対応する姿勢」を伝える)
- 伝えたいこと: 安定した作業体制、丁寧な仕上がり、地域貢献につながること

構成は次の通りにしてください。
1. 挨拶と事業所の簡単な紹介
2. 提案したい作業内容と対応可能な体制
3. 依頼するメリット(企業側にとっての利点)
4. 見学・打ち合わせのお願い

事実と異なる実績や、確認していない数字は書かないでください。

出てきた下書きは、必ず自分たちの言葉で事実確認をしてから使います。特に「これまでの受注実績」の部分は、AIに任せず、実際の数字・事例だけを入れるようにします。

受注した作業を"標準化"して、次に繋げる

新しい作業を受注できても、担当した職員だけが手順を覚えていて、他の職員や新しい利用者に引き継げない、という状態では、受注が広がっても現場が回らなくなります。ここもChatGPTで手順書の下書きを作ると時短になります。

以下の作業内容について、初めて担当する利用者・職員向けの
作業手順書の下書きを作ってください。

作業内容: (実際の作業手順を箇条書きで伝える)

構成は次の通りにしてください。
1. 作業の目的(誰のための何の作業か)
2. 準備するもの
3. 手順(番号付きで、1つの手順は1つの動作にする)
4. よくある失敗と注意点
5. 完成の確認方法

専門用語は使わず、初めて作業する人でも分かる言葉で書いてください。

手順書ができたら、実際に現場で使いながら、分かりにくい部分を職員が手直ししていきます。この手順書があることで、新しい利用者が入ったときの指導の負担も減り、複数の職員が同じ品質で作業を教えられるようになります。

精度と伝え方を詰めるポイント

1. 実績・数字は事実だけを入れる

ChatGPTが作る提案書の下書きは、あくまで文章の型であって、中身の実績・数字は自分たちで確認した事実だけを入れます。AIが「例えば」と補ってしまった実績らしき表現をそのまま残さないよう、必ず全文を読み直してから送ります。

2. 事業所名・利用者情報の扱い

提案書の下書きを作る段階では、まだ確定していない社名や個人が特定できる利用者情報をプロンプトに入れないようにします。個人向けプランは、無料・有料を問わず既定では入力した内容が製品改善(モデル学習)に使われる設定になっているサービスが多く、設定画面でオフにできる場合があります(有料にすれば自動的に安全になるわけではありません)。事業所の正式名称や住所は、下書きができた後に自分たちで書き加える、という順番にしておくと安心です。

3. 相手企業への裏取り

提案書に「地域貢献につながる」「工賃向上に直結する」といった表現を入れる際も、実際にその企業にとってのメリットになっているかを、可能であれば見学や打ち合わせの場で確認します。AIが作った文章をそのまま送りつけるのではなく、相手の状況に合わせて調整する一手間が、受注につながるかどうかの分かれ目になります。

さらに"仕組み化"するなら

ここまでの方法は、どれも「新しい作業を思いついたときに、都度ChatGPTに聞く」という単発の使い方です。もう一段上には、地域の企業からの問い合わせや過去の提案・受注結果を1か所に蓄積し、次に似たような提案をするときに「前回はこう伝えたら受注につながった」という記録を踏まえて提案できる仕組みがあります。

これは一度型を作ってしまえば、担当者が変わっても、事業所としての提案の質を落とさずに引き継げるようになります。蓄積の仕方そのものは、扱う作業の種類や地域の産業構造で変わります。農産物の一次加工が中心の事業所と、企業の軽作業を請ける事業所では、残しておくべき情報がまるで違うからです。

提案から"事業所の売り込み方"まで繋げる(Claude Codeで一段上へ)

ここまでは「1つの作業を1社に提案する」話でした。ただ、工賃向上を継続的に進めるには、複数の候補作業・複数の提案先を同時に動かし、どこにどんな提案をして、結果がどうだったかを管理していく必要があります。

僕が普段使っているAIの作業環境(Claude Codeというツール)は、単に文章を作るだけでなく、複数の提案先とのやり取りの状況を整理して次のアクションを洗い出す、事業所の作業内容・実績をまとめた簡単な紹介資料をその都度更新する、といった使い方ができます。地域の企業向けにいつでも渡せる「事業所の対応力が伝わる資料」を、状況が変わるたびに手を動かして作り直すのではなく、同じ環境の中でまとめて管理・更新していく形です。

(参考までに、TAIDAIが日々この環境を使っている立場は「B型事業所に向けて営業する側」であり、B型事業所が地域企業に提案する場面とは商流が異なります。ここで紹介しているのは、その環境が持つ「情報を1か所にまとめて更新し続ける」という性質を、事業所の売り込み管理にも応用できるという考え方です。)

ここまで来ると、「今年度の工賃目標に対して、どの作業がどれだけ効いたか」を提案先ごとに追えるようになります。年度が終わったあとに都道府県へ報告する平均工賃額が、その時点で慌てて集計する数字ではなく、日々の受注管理の結果として自然に出てくる状態です。

よくある質問

ChatGPTの無料版でもここまでできますか?

無料版でも試すこと自体はできます。ただしこの記事の手順は、アイデア出し→絞り込み→提案書→手順書と、1つのテーマで何度もやり取りする使い方なので、無料版のメッセージ回数の上限に当たる可能性があります(正確な上限は公開されていません)。1日に何本もまとめて進めようとせず、テーマごとに日を分けて進めると安全です。

利用者の個人情報を入れても大丈夫ですか?

実名や個人が特定できる情報は入れないようにしてください。「利用者は12名で、細かい手作業が得意な人が多い」のような傾向としての情報にとどめ、個別の氏名・状況は入れない運用を徹底することをおすすめします。

新しい作業を始めても、うまく定着するか不安です

AIが出す候補やたたき台は、あくまで検討のスピードを上げるための道具です。実際にその作業が利用者に合うか、無理なく続けられるかは、少人数から試してみて現場で判断するのが確実です。試験的に始めて、手順書を整えながら少しずつ広げていく進め方が現実的です。

まとめ、そして次の一歩

工賃向上のための新しい作業づくりは、多くの事業所で「アイデアが出ない」「提案の仕方が分からない」「受注できても標準化できない」の3つで止まっています。ChatGPTで作業アイデアの候補を広げ、単価・材料費・作業時間まで確認したうえで絞り込み、提案書の下書きを作り、受注した作業を手順書として標準化する。この3つを順番に整えると、単発の受注から、繰り返し頼まれる安定した作業へと変わりやすくなります。

まずは事業所の状況をChatGPTに伝えて、作業アイデアを10個出してもらうところから試してみてください。新しい作業づくりの型ができれば、利用者募集のチラシ作成や、支援記録の効率化など、他の業務にも同じ考え方を横展開できます。「アイデア出し」から「提案」「標準化」まで、どう進めればよいか相談したい場合は、お気軽にご相談ください。

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