家族への連絡文・事業所だよりをAIで書く手順【匿名化の線引きつき】
2026-08-31
利用者の家族への連絡文と、事業所だより。この2つを毎月書いている職員は多いはずです。個別の家族には通所の様子や作業内容の変化を伝え、事業所だよりは行事の報告や作業の紹介を、通所している全員の家族に向けて出します。ChatGPTで文章を書くこと自体はすでに試した職員も増えてきたと思いますが、毎月の連絡文やだよりをAIに任せている事業所はまだ多くありません。利用者の名前や様子をAIに入力していいのか、だよりに誰かのエピソードを載せるときにどこまで書いていいのか、その線引きがはっきりしないまま止まっている、というのがよくある詰まり方です。
詰まっている理由は文章力ではなく、線引きが決まっていないことです。この記事では、AIに渡してよい材料と、渡さない材料を先に分けたうえで、ChatGPTで下書きを作る流れを、一般に使える手順として整理しました。
前提: AIに渡すのは連絡文の材料まで。だよりの個人部分は渡さない
連絡文と事業所だよりは、どちらも利用者の様子を書く文章ですが、AIとの距離が違います。
- 個別の連絡文: 記号化と学習利用オフを済ませたうえで、材料をAIに渡して下書きさせてよい範囲です
- 事業所だより: 行事や作業の紹介といった全体向けの部分はAIに渡してよいのですが、特定の利用者のエピソードと写真はAIに渡しません。そこは同意の範囲を確認したうえで、職員が後から差し込みます
なぜ分けるかというと、だよりの個人部分には「AIに渡してよいか」とは別に「そもそも載せてよいか」という同意の判断が乗っているからです。この2つを同じ画面で同時に処理しようとすると、AIが整えた文章に引っ張られて、同意の範囲を超えた記述が通ってしまいます。判断の場所を分けておけば、この事故は起きません。
AIに入れる前に済ませる2つのこと
**1つ目は、ChatGPT側の設定です。**個人向けの無料版・Plusは、こちらで切り替えるまで、打ち込んだ内容がモデルの改善に回りうる側で動いています。ChatGPTのプロフィールアイコン → 設定 → データコントロールと進みます。項目名は「すべての人のためにモデルを改善する」。これをオフに倒してください(2026年8月時点の名称です。画面は変わることがあるので、見当たらなければOpenAIヘルプ「データコントロールに関するFAQ」で現行の手順を確かめてください)。効き方はアカウント単位なので、職員が増えるたびに同じ確認が要ります。この設定が個人情報保護委員会の注意喚起でいう「当該個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認すること」にあたる理由は支援記録・モニタリングの負担をAIで減らす手順に書いたので、そちらを一度読んでから進めてください。
**2つ目は、扱う情報の種類の確認です。**利用者の障害の状況は、法律が特に慎重な扱いを求める要配慮個人情報にあたります(個人情報保護法第2条第3項と施行令第2条第1号。政令は身体障害・知的障害・精神障害(発達障害を含む)などの心身の機能の障害があることを挙げています)。連絡文に診断名や体調の詳細を書き込む必要は、たいていありません。事実として起きた作業のことだけを材料にします。
「Aさん」に置き換えても、個人データではなくなりません
ここは誤解されやすい点なので、先に書いておきます。記号化はAIに入れるための必須の作業ですが、**それで個人情報ではなくなるわけではありません。**事業所の手元には記号が誰を指すかの分かる記録が残るため、容易に照合できる以上は個人情報にあたります(個人情報保護法第2条第1項第1号)。そしてその記録が利用者ごとに検索できる形で整理されている以上、個人情報データベース等を構成する個人データでもあります(同法第16条第3項)。記号に置き換える意味は、入力先で個人が特定されないようにすることであって、事業所側の扱いを軽くすることではありません。対応表をどこに置くかも含めた整理は支援記録・モニタリングの負担をAIで減らす手順に書きました。
だから「記号にしたから何を書いてもよい」とはならず、記号にしたうえで、書く内容も事実だけに絞ります。

個別の家族への連絡文をAIで書く手順
通所の様子や作業内容の変化を伝える連絡文は、その利用者の家族に向けて出すものです。ここで一つ補足しておくと、成人の利用者にとって、家族も法律上は第三者です(個人情報保護法第27条第1項)。家族への連絡は、多くの場合、利用開始時の書面で本人の同意を得たうえで行われているはずなので、その同意がどこまでを対象にしているか、本人に判断が難しい事情がある場合は代理人が誰なのかを、同じ書面で一度確かめておいてください。
そのうえで、下書きの手順は次の通りです。
- 職員間のメモでは「Aさん」のように記号で呼び、実名はAIに入力する経路には出さない
- 作業内容や様子といった「事実」だけを箇条書きにし、診断名や体調に関する詳しい記述は入れない
- ChatGPTに整えてもらった後、事業所内のファイルで記号を実名に戻してから印刷・送付する
以下は、ある利用者(Aさん)の今月の通所状況をまとめたメモです。
これをもとに、ご家族への連絡文の下書きを作ってください。
・敬語で、かつ堅すぎない文体でお願いします
・本人の頑張りが伝わる書き方にしてください
・メモに書かれていない内容(体調や診断に関することなど)は書き足さないでください
---
(ここにAさんの今月の通所状況を箇条書きで貼り付ける)
「書かれていない内容は書き足さない」の一文を外すと、AIが文章をもっともらしく仕上げようとして、様子や体調について実際には無い描写を付け加えてしまうことがあります。出てきた下書きは、実際に本人を担当している職員が読み、事実と違う部分がないかを確認してから、記号を実名に戻して送付します。この復元はChatGPTの画面ではなく、事業所内のファイルで行ってください。
どう崩れるかを一つ、例で置いておきます。メモに「封入作業を週3日、後半から検品を初めて担当」とだけ書いてあった場合です。
【崩れた出力の例】
今月のAさんは体調も安定しており、以前より明るい表情で作業に取り組まれています。
集中力も上がってきたようで、職員一同うれしく思っております。
【直し方】
「体調も安定」「明るい表情」「集中力も上がってきた」はメモに無い。
感想で埋めた部分を削り、メモの事実だけに戻す。
今月のAさんは、封入作業を週3日続け、後半からは検品を初めて担当されました。
削るだけで済ませず、なぜ足されたかも見ておいてください。たいていは、メモの分量が少なくて文章の座りが悪く、AIがそこを埋めにいっています。その場合はプロンプトをいじるより、メモに事実を1行足す方が早く、事実の量が増えるぶん、連絡文としても読みごたえが出ます。
事業所だよりをAIで書く手順
事業所だよりは、行事の報告や作業内容の紹介といった「誰の個人情報でもない部分」と、「特定の利用者のエピソードや写真」が混在する文章です。前段で書いたとおり、AIに渡すのは前者だけにします。
以下は、今月の事業所の活動内容のメモです。
就労継続支援B型事業所の「事業所だより」の下書きを作ってください。
・見出しをつけて、3〜4つのトピックに分けてください
・断定的な表現(必ず就職できる、確実に工賃が上がる、など)は使わないでください
・特定の個人が話しているように読める書き方は避けてください
・メモに書かれていない実績や数字は足さないでください
・利用者個人のエピソードを入れる欄は、本文を書かずに【職員が同意を確認して差し込む】とだけ出力してください
---
(ここに今月の行事・作業内容などのメモを貼り付ける)
最後の1行が、この記事で一番効く指定です。入れておくと、出力はこういう形で返ってきます。
## 今月の作業から
今月から封入作業に新しい種類が加わり、午前と午後で班を分けて取り組んでいます。
## 利用者の様子
【職員が同意を確認して差し込む】
## 来月の予定
10月は避難訓練と、地域のバザーへの出店を予定しています。
この【 】の欄に、同意を得ている利用者のエピソードや写真を、同意記録に照らしてから職員が差し込みます。AIがこの欄を勝手に埋めてきたら、その部分は使わず、指定の行を足して出し直させます。この順番を崩さないことが、そのまま安全につながります。
同意の記録に、何が書かれているべきか
個人情報保護法は、同意をどう記録するかという様式までは定めていません。だから以下の4点は法令上の要件ではなく、現場で職員が判断できるようにするための実務の項目です。ここが書かれていないと、だよりを作る職員は自分の事業所の同意書を見ても判断がつかず、結局その都度サビ管に聞くことになります。逆に言えば、いま使っている様式にこの項目が無いからといって、すでに得た同意が無効になるわけではありません。次に様式を見直すときの足し先として読んでください。
- 名前の出し方: 実名か、イニシャルか、名前は出さないか
- 写真の可否: 顔が分かる写真を載せてよいか。後ろ姿や手元だけならよいか
- 媒体の範囲: 紙のだよりだけか、ウェブサイトやSNSにも載せてよいか。だよりをPDFでウェブに置くなら、それは紙とは別の範囲です
- 期間と撤回: いつまで有効か。撤回されたとき、すでに配ったぶん・すでに載せたページをどう扱うか
このうち抜けやすいのが最後の2つです。紙のだよりの同意を、そのままウェブ掲載の同意として扱ってしまう。撤回されたときにウェブのバックナンバーが残ったままになる。どちらも、様式に1行足しておけば防げます。
毎月ゼロから始めない形にする
連絡文もだよりも、月に一度その都度ゼロから文章を考えるのは負担の大きい作業です。だよりの見出し構成と連絡文の型を一度決めておけば、毎回はその月の出来事を当てはめるだけで済みます。
型より効くのは、確認の順番まで型に含めることです。誰の写真・エピソードをどの範囲で載せてよいかを一覧にして、下書きの手順の中に「ここで一覧を見る」という工程を埋め込んでおく。そこまでやって初めて、担当が変わっても同じ基準で判断できる状態になります。型だけを渡して確認の順番を渡さないと、次の担当者は文章の形だけ真似て、同意の確認を飛ばします。
僕が普段使っているAIの作業環境(Claude Codeというツール)なら、この「型」と「確認の順番」をひとまとめに置いて、次の月も同じ手順で組み立てられます。TAIDAIでも、外に出す文章はこの順番で回しています。だよりで言えば、見出し構成を固定し、活動報告の下書きを作らせ、個人部分は空欄のまま「ここは職員が同意の範囲を確認して差し込む」と印を残した状態で出す。**空欄を空欄のまま出させることが、この工程では効きます。**AIが気を利かせて埋めてしまうと、その一文が同意の確認を通らずにだよりへ載ります。
どこまで型にするかは事業所の規模と体制によって変わるので、実際のだよりと同意の様式を見ながら決めていく話になります。担当が変わっても同じ基準で判断できる状態を作るところまでが、仕組み化の中身です。
送る前に見る3点
1. 連絡文は「記号のままAIに入れ、事業所内で実名へ戻す」を全員で揃える
人によって判断が分かれると、うっかり実名のまま貼り付ける場面が出てきます。手順として揃えておけば、迷う余地がなくなります。
2. だよりの個人部分は、同意記録の4項目に照らす
名前の出し方・写真の可否・媒体の範囲・期間と撤回。だよりを作る前に、この4つを記録で確認する工程を手順に組み込みます。
3. AIが整えた文章も、担当職員が事実確認してから送る
ChatGPTが整えた文章は下書きです。本人の様子を実際に見ている職員が、事実と違う部分がないかを確認してから、正式な連絡文・だよりとして送付・配布します。
よくある質問
行事の集合写真なら、同意がなくても載せられますか?
集合写真だから同意は要らない、という扱いはおすすめしません。だよりに載る写真は、その人がこの事業所に通っているという事実を、他の家族全員に伝えることになります。個人が識別できる形で配るのであれば、集合写真であっても同意記録に照らしてから載せる、を事業所の運用にしておくのが確実です。同意が取れていない方が写り込んでいる場合は、その方が特定されない写真を選ぶか、加工します。判断に迷う場面をなくすために、掲載の目的を明示したうえで同意を取る運用を、先に整えておいてください。
LINEやメールでそのまま家族に送っていい下書きですか?
ChatGPTが出した下書きは、文章の土台です。実名に戻すこと、事実確認をすることの2つを終えてから送付してください。特に体調や作業への取り組み方といった具体的な様子は、必ず担当職員の目で最終確認します。
だよりのバックナンバーをウェブに載せてもいいですか?
紙で配る同意と、ウェブに置く同意は別ものとして扱ってください。ウェブは配布先を事業所が管理できず、検索でも見つかります。同意の記録に媒体の範囲が書かれていないなら、まずそこを埋めるのが先です。
支援記録の残し方は支援記録・モニタリングの負担をAIで減らす手順、見学希望を増やすためのチラシ・SNS文の作り方は見学希望を増やすチラシ・SNS文をAIで作るにまとめています。
まとめ、そして次の一歩
家族への連絡文と事業所だよりは、同じ「利用者の様子を伝える文章」に見えますが、AIに渡してよい範囲が違います。連絡文は記号化と学習利用オフを済ませたうえで材料を渡し、事業所内で実名に戻す。だよりは全体向けの部分だけを渡し、個人のエピソードと写真は同意の記録に照らして職員が差し込む。この2本の線を手順として固定すれば、毎月迷わずに使えます。
まずは今月分の連絡文を1件、記号化してChatGPTに下書きさせるところから試してみてください。あわせて、事業所の同意記録に4つの項目が書かれているかを一度見てみると、埋めるべき空欄が見つかると思います。同意の管理や型づくりまで仕組みにしたい場合は、お気軽にご相談ください。
あわせて読みたい
- 利用者募集・広報B型事業所の集客|見学希望を増やすチラシ・SNS文をAIで作る【無料・Gemini/Canva】就労継続支援B型の利用者募集向けに、チラシ原稿とSNS投稿文をGemini・Canvaで作る具体的な手順を解説します。集客の実態と、AIで作るときの注意点まで紹介します。
- 職員の業務効率化B型事業所の求人票・面接準備をAIで整える【職員募集・ChatGPT】就労継続支援B型事業所の職員採用向けに、求人票の下書きと面接の質問リストをChatGPTで作る手順を解説します。職業安定法の必須記載事項と、公正な採用選考のNG質問も押さえます。
- 支援記録・計画書支援記録・モニタリングの負担をAIで減らす手順【匿名化が前提】日々の支援記録の負担を音声入力とAIで減らす手順を解説します。匿名化と学習利用オフを前提にした記録の残し方と、モニタリング時の見直し材料づくりまで紹介します。