個別支援計画の下書きをAIで時短する手順【匿名化が前提】
2026-07-17
個別支援計画をAIで、というのは、すでに一度は考えたことがあるサビ管の方も多いと思います。ChatGPTに面談メモを読ませて下書きを作らせてみた、という事業所もここ1、2年で増えてきました。ただ、そこから先で止まっている方も少なくないはずです。利用者の名前や状況をそのまま入れてしまっていいのか判断がつかず、結局手書きに戻してしまった。あるいは、出てきた文章が一般論すぎて、目の前の利用者の実態と合わず、直す方が時間がかかった。そんな経験がある方に向けて書きます。
この記事では、「AIに全部任せる」話ではなく、「匿名化を前提にした、個別支援計画の原案づくりの手順」を整理して書きます。使うのはChatGPTと音声入力・文字起こしという、特別な契約がなくても始められるものです。特定の福祉専用ソフトを売るための記事ではなく、まず自分たちの手で試せる範囲を中立の立場で整理しています。
この記事はこんな方向けです
- ChatGPTを一度は触ったことがあるが、利用者の個人情報を入れていいのか分からず使うのをやめた、あるいは不安を抱えたまま使っているサビ管・管理者の方
- AIに書かせると一般論の文章になってしまい、現場の利用者の実態と合わないと感じたことがある方
- 事業所の様式や運営指導(旧・実地指導)で通用するのか、AI活用に踏み切れずにいる方
すでにAIを一度は試している前提で書いています。手順は改めて確認しつつ、「匿名化」と「精度を詰めるポイント」を中心に読んでもらえると、そのまま事業所の運用に落とし込める形になっています。
前提: AIにできるのは"下書き"まで
個別支援計画の作成プロセスは、法律や指定基準で決まっています。アセスメントをした上で、原案を作るのはサービス管理責任者の役割です。その後、担当者会議で意見交換をし、利用者・家族に説明して文書で同意を得てから交付し、モニタリングにつなげる、という一連の流れは、AIを使っても変わりません。
AIが担えるのは、あくまでこの原案づくりの「たたき台」を早く出すところまでです。会議での意見交換も、利用者への説明と同意も、最終的な文章の責任も、サビ管の仕事として残ります。ここを最初に押さえておくと、「AIに計画を作らせて大丈夫か」という不安の大部分は整理できるはずです。AIは判断そのものを代わりにしてくれる道具ではなく、判断するための時間を作ってくれる道具、という位置づけです。
匿名化してAIで下書きを作る手順
ここが一番大事なポイントです。個別支援計画には、利用者の障害の状況や生活歴といった、要配慮個人情報(障害の状況や病歴など、特に慎重に扱うことが法律で求められる個人情報)にあたる内容が含まれます。個人情報保護委員会のガイドラインでも、要配慮個人情報は特に慎重な取り扱いが求められています。一般に公開されている無料のChatGPTに実名や特定できる情報のまま入れてしまうと、入力内容が学習データとして扱われたり、海外の事業者に渡ったりする観点から、個人情報保護法違反に問われるおそれがあると指摘されています。
だからこそ、AIに入れる前の「匿名化」を、手順の一番手前に固定します。
- 面談メモや支援記録の要点を、AIに入れる前にテキストでまとめておく
- 利用者の実名を「Aさん」「Bさん」のような記号に置き換える
- 通っている学校名、勤務先、住んでいる地域名など、組み合わせると本人が特定できる固有名詞を消す
- 職員の実名や事業所の固有名詞も、必要がなければ同様に伏せる

匿名化したメモが用意できたら、ChatGPTに投げる形にします。音声入力を使うと、面談中に手書きでメモを取る手間が減り、後からテキスト化して匿名化する作業もスムーズです。スマートフォンの音声入力機能やGoogleドキュメントの音声入力を使えば、その場で話した内容がそのままテキストになります。ただし、音声入力の文字起こしも外部のサービス上で行われる点には注意が必要です。面談中は実名でなく「Aさん」のように呼び方を変えて話すか、文字起こしができた直後に実名の部分だけ消しておくと安心です。
個別支援計画の原案を下書きさせるプロンプト(AIへの指示文)の例です。
以下は、ある利用者(Aさん)についての匿名化済みの面談メモと現状です。
これをもとに、就労継続支援B型の個別支援計画の原案を、
次の構成で下書きしてください。
1. 本人の希望・意向
2. 現在の状況(健康面・生活面・作業面)
3. 長期目標(半年〜1年程度)
4. 短期目標(1〜3ヶ月程度)
5. 支援内容(誰が・何を・どのように支援するか)
推測で情報を補わないでください。
メモに書かれていない内容は書かないでください。
文章は簡潔な「である」調でお願いします。
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(ここに匿名化済みのメモを貼り付ける)
支援記録の下書き用には、もう少し軽いプロンプトを使います。
以下は、音声入力でメモした匿名化済みの支援記録の要点です。
これを、支援記録として提出できる文体に整えてください。
・時系列がわかるように書いてください
・事実と、支援員が感じたことは分けて書いてください
・メモにない出来事は書き足さないでください
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(ここに匿名化済みのメモを貼り付ける)
どちらのプロンプトも、「推測で補わない」「書かれていない情報は書かない」という指示を必ず入れます。これを入れないと、AIは文章としての体裁を整えるために、それらしい言葉を勝手に足してしまうことがあるためです。
出てきた文章は、あくまで原案の土台です。実際の利用者の様子や、担当者会議で出た意見を踏まえて直すのは、これまで通りサビ管の仕事として残ります。AIが作った文章をそのまま利用者に見せる、ということはしません。
匿名化の精度を詰める("なんとなく"を卒業するポイント)
1. 入れる前の匿名化チェック
AIに入れる直前に、次の3点を見る習慣をつけておくと安心です。実名が残っていないか、住所や勤務先など特定できる固有名詞が残っていないか、そして家族や関係者の名前が紛れ込んでいないか。この3点は、慣れてくると数秒で確認できるようになります。
2. 事業所としてのルール化
「入れてよい情報とダメな情報」を、担当者の感覚任せにせず、事業所として決めておくことが大切です。たとえば「匿名化した支援内容の要点はAIに入れてよいが、診断名や具体的な病歴はテキストに残さない」といった線引きを、職員全員で共有しておきます。これを一部の職員だけの裁量にしてしまうと、人によって扱いがばらつき、どこかで事故が起きる原因になります。
3. 出力の鵜呑み禁止
AIが出した文章は、必ず担当者会議と本人への説明の場で、現実の状況と突き合わせます。AIの文章がもっともらしく見えても、それは「メモをもとに文章として整えた結果」であって、現場の実態そのものではありません。この確認の工程を省略しないことが、精度を保つ一番の勘所です。
計画書の下書きから、事業所の仕組みへ
ここまでの方法は、面談のたびにサビ管が匿名化のメモを作り、ChatGPTに貼り付けて下書きをもらう、という手動の作業が残ります。もう一段上には、音声入力で録った面談メモを、そのまま匿名化のテンプレートに沿って整理し、原案の下書きまで半自動で進める、という仕組み化の形もあります。一度この流れを事業所の型として決めてしまえば、担当が変わっても同じ品質で回せるようになります。
さらに、この考え方は個別支援計画だけで終わりません。支援記録や請求まわりの下ごしらえ、新しい利用者を募集するための広報文の下書き、工賃向上のための作業内容の整理まで、面談メモから始まった一連の流れを同じ仕組みの中でつなげていけます。匿名化のルールを一度決めておけば、それを他の書類にもそのまま使い回せる、という意味です。
僕が普段使っているAIの作業環境(Claude Codeというツール)では、こうした匿名化のルールをテンプレートとして残しておき、次からの面談メモも同じ手順で処理する、というところまで任せられます。事業所ごとに使っている様式や記録の残し方の前提が違うため、記事だけで一般化するのは難しい領域です。Claude Codeの導入・設計から伴走します。
よくある質問
無料版ChatGPTでも大丈夫ですか?
匿名化した内容であれば、無料版でも下書きの作成自体は可能です。ただし、匿名化が徹底できているかは事業所として必ず確認し、診断名など特に配慮が必要な情報は、そもそもテキストに残さない、という判断をおすすめします。
運営指導(旧・実地指導)で問題になりませんか?
個別支援計画の作成プロセス(アセスメント、サビ管による原案作成、担当者会議、本人・家族への説明と同意)自体は、AIを使っても変わりません。AIは原案の下書きを早く出すための道具であり、最終的な計画の作成・説明・同意の手続きを省略するものではないため、その点を押さえて運用すれば大きな懸念にはなりにくいと考えられます。運営指導の運用は自治体によって細部の判断が異なる場合があるため、迷う場合は所轄の自治体に事前に確認しておくと安心です。
パソコンが苦手な職員でも使えますか?
音声入力とスマートフォンのメモアプリだけでも始められます。まずは1人が面談メモの匿名化から試してみて、慣れてきたら他の職員にも広げる、という進め方が現実的です。
まとめ、そして次の一歩
個別支援計画の原案づくりにAIを使うかどうかで、多くの事業所が立ち止まっているのは、「便利そうだけど、利用者の情報を入れていいのか分からない」という点だと思います。入れる前に匿名化する、という一手間を手順として固定してしまえば、AIは原案づくりの時間を短くしてくれる道具として、安心して使えるようになります。
まずは1件、次の面談メモを匿名化してAIに投げるところから試してみてください。この考え方が身につけば、支援記録や広報文など、他の業務にも同じ手順を横展開できます。匿名化のルールづくりや、仕組み化まで相談したい場合は、お気軽にご相談ください。
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